県政オンブズマン静岡 〜静岡県庁の光と闇〜

知事・県職員の海外視察の実相


平成27年6月26日(日)

県政オンブズマン静岡では、かつて、海外旅費が増大した時期にその調査を行った(http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/699.html)上で、いくつかの要望を行い回答を得ました(http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/703.html)が、何も改善されませんでした。
一方で、朝日新聞で規定額を超える宿泊費が8割近かったとの批判を受け、県はその規定額がおかしいと言い出し改正を求めるなど、メリットはそのままにデメリットの改正には迅速というご都合主義的な対応を行おうとしています。(ちなみに、国では6年前に旅費法の見直し検討資料として海外宿泊費の実勢価格との比較調査を行っているが、そこでは宿泊費だけでなく宿泊費+日当との比較も行っている。見直すなら、宿泊費だけでなく実態に合っていない日当の問題も併せて取り扱うべきであろう。)
我々の税金がどう使われているのか、それを役人のチェック任せにしてはいけません。
このため、一つの例として、
川勝平太静岡県知事と県職員4名による平成27年10月25日〜11月2日のイタリア・イギリス訪問に見る海外視察の実相を以下、明らかにします。

以下は、知事が行程まで公表しているとしている、県ホームページ上の旅費の全容です。(旅費支給額の多い順)
所属名  出発日  帰着日  職 氏名  金額  用務  用務先(着地)
10月25日〜11月2日 知事 川勝平太  1,127,444  スポーツ・観光交流協定締結
ホテルアソシア(静岡市葵区黒金町)→フリウリベネチアジュリア州内→オリンピックスタジアム等→トゥイッケナムスタジアム等→ロンドン市内
文化・観光部スポーツ交流課
10月25日〜11月2日 班長 笹野努  567,645 イタリア・イギリス訪問
知事公舎(静岡市葵区安東)→羽田空港(東京都大田区)→ゾンコラン山→フリウリ・ヴェネチア・ジュリア州→コーヒー工場→ブライトン→ジャパンパビリオン、オリンピックパーク→トゥイッケナムスタジアム→英国静岡県人会→羽田空港
文化・観光部スポーツ交流課
10月25日〜11月2日 主査 渥美智之  551,623 イタリア・イギリス訪問
羽田空港(羽田空港)→ゾンコラン山→フリウリ・ベネツィア・ジュリア州政府→コーヒー工場→ブライトン→ ジャパンパビリオン→トゥイッケナムスタジアム→英国静岡県人会→羽田空港
企画広報部知事公室広報課
10月25日〜11月2日 主査 今井直  540,506  イタリア・イギリス取材
羽田空港(羽田空港国際線ターミナル)→フリウリ・ヴェネチア・ジュリア州→フリウリ・ヴェネチア・ジュリア州→フリウリ・ヴェネチア・ジュリア州→ブライトン→ロンドン→ロンドン→ロンドン→羽田空港
文化・観光 部観光交流局
10月25日〜11月2日 参事 加藤博昭  530,987 スポーツ協定締結及びWCラクビー現地視察
羽田国際空港(東京都港区)→ゾンゴラン、ストゥーリオ、サンダニエール→州政府庁舎、サグラード→グラード、アクイレイア→WC試合会場→WC試合会場、オリンピックスタジアム→WC試合会場→ロンドン→羽田空港

しかし、この公表旅費からはうかがい知れない旅行の実相が当方が公文書開示請求で入手した公文書から以下のとおり明らかになりました。

知事、公費旅行中に私用で1日抜けるも公表旅程では隠蔽、按分負担なく航空費は全額税金で

知事の旅費に関する計算書は以下のとおりです。

まず、この旅費計算書の見方から説明します。

旅費計算書の上段の表は、国内旅行に関するもので、
まず、10月25日に、墨塗にされているが自宅から公用車で静岡駅に行き、そこから新幹線のグリーン車を使い羽田空港から出国したことが、
次に、11月2日には、羽田空港に到着後、品川経由で静岡駅に戻り、ホテルアソシアでの公務に就き、その後公用車で帰宅したことが分かります。

旅費計算書の2表目は日ごとの用務先、宿泊地、日当の額、宿泊料です。
・日当は県の条例で定められた定額で、昼食代や電話代などの名目で支給されるものですが使途は全く自由で、報告の必要もなく、使わなくても返金の必要もありません。現在、電話は公費でレンタル携帯が用意されるため、現実には毎日支給されるお小遣いと言っていいでしょう。帰国日は航空機内に一部時間居たというだけで、丙クラスの日当ですが5,700円支給されています。合計では59,100円支給されています。
・ここに記載の宿泊料(食事代含む)は、県の条例で定められた定額です。これを下回る金額で宿泊しても返金の必要はありませんが、理由があって規定額を超えた場合はその額が、2枚目の「(外国別紙)」に記載のとおり、調整額として計算され、自己負担の生じないように税金で補填されます。規定額87,000円と調整額51,100円の合計138,100円が支給されています。

旅費計算書の3表目以下は集計表です。
うち、外国計の表の旅行雑費とは、パスポートの取得費用やビザ取得費用、外貨交換手数料などです。
また、「その他」に記載の51,100円はさきに説目した超過した宿泊料の補填です。
なお、「航空機」に記載の859,960円はビジネスクラスの航空運賃です。
2枚目の「(外国別紙)」には、宿泊料の差額計算のほかに、知事が実際に負担した現地交通費も記載されています。





問題は、旅行5日目の10月29日です。
用務先の欄には「ロンドン(知事用件)」と記載され、日当も宿泊料も支給されていません。
つまり、私用であったということです。
職員はだめであるのに、知事は日当と宿泊料の支給を受けなければ、公費旅行中に私用で1日外してもいいのでしょうか。
もし許されるとしても、航空運賃や国内交通費なども、その欠いた日数に応じて按分して減額すべきです。

この点だけでも、まさに、公私混同旅行です。


知事だけではなく、随行職員みんなで、税金で購入したチケットでラグビーワールドカップ決勝を観戦

イタリア・イギリス訪問旅行全般については、このページの最後の総括で検証しますが、ここでは旅行6日目と7日目の視察です。
実際は公費、すなわち税金でチケットを事前に購入し、静岡県とは関係のない決勝戦の試合観戦を知事以下職員5人全員で行っていたことが判明しました。

以下は、チケット入手の課程を示す公文書の一部です。
1枚目で分かるのは、県は当初、3位決定戦のチケット7枚と決勝戦のチケット17枚を入手しようと申し込んでいたということです。
ところが、申込先が用意できたのは2枚目のとおり、カテゴリーAという最高席で各試合2枚という具合で、希望どおり入手できませんでした。
そこで、3枚目のとおり、最高席2席を含めて全員観戦のA案から知事と随行者1名の2名だけの観戦というC案の中から県職員が最終的に選んだのが、お手盛りといわれても仕方ないようなA案です。

さらに、4枚目が問題です。
後になってもう一名(広報課主査)が、イタリア・イギリス訪問旅行に同行するというので、一人だけ試合観戦無しはかわいそうだとでも思ったのでしょうか、わざわざJTBから203,700円もかけて、しかもカテゴリーBという準最高席(さきのB案では知事が観戦する予定のクラス)での観戦チケットを公費で購入していたのです。

こうして、総額629.700円という税金が5人の職員の試合観戦に投じられたのです。










そもそも、静岡県が参考にすべきはエコパで開催される規模の予選リーグの会場運営であって、決勝戦ではないはずです。
まして、試合自体を観戦する必要はありません。

公私混同も甚だしいと言わざるを得ません。


随行職員、旅費を過大に請求し、県はこれを黙認して支給

これは、知事に同行したスポーツ交流課班長の笹野努の旅費計算書です。
冒頭の知事のものと比較してください。
国内旅行部分を見ると知事同様新幹線のグリーン車を利用して静岡から品川経由で羽田という行程と分かります。(帰路の410円の差は不明)
国外旅行部分は、日当の金額が役職によって異なるため、イタリアでは5,200円がロンドンでは6,200円が毎日支給され、帰国日にわずかに掛かった機内滞在に対しても3,800円が支給されています。

問題は宿泊料です。
宿泊料は別紙の計算書によれば規定額77,200円と超過補填額51,900円の計129,100円となっています。
ところが、実際に県に請求され、支給された旅費の宿泊料は規定額96,500円と超過補填額51,900円の計148,400円だったのです。





どういう経緯でこのように支給されたのか、悪意があったのか無かったのか、公文書からは不明です。

しかし、はっきりしているのは、税金を支出するというのに、あまりにずさんなチェック体制が現にまだあるということです。
こちらから指摘される前に、少なくとも、昨年度の全ての海外旅費くらいは自主的に再チェックし正してもらいたいものです。


総括〜復命書に見る海外視察の成果〜

まず始めに、このページの冒頭、県がインターネットで公開している旅費の全容を示したが、その知事の部分をもう一度見てみましょう。

所属名  出発日  帰着日  職 氏名  金額  用務  用務先(着地)
10月25日〜11月2日 知事 川勝平太  1,127,444  スポーツ・観光交流協定締結
ホテルアソシア(静岡市葵区黒金町)→フリウリベネチアジュリア州内→オリンピックスタジアム等→トゥイッケナムスタジアム等→ロンドン市内

その上で、以下の実際の知事の旅程をご覧ください。
特に内容に注目してもらいたいのですが、オバーロ市・ゾンコラン山視察、チーズ工場視察、生ハム工場視察、アクイレイア世界遺産視察、コーヒー工場視察など、視察を観光に読み替えても何ら違和感のないものがほとんどであることが分かります。





そのようなイタリア・イギリス訪問ですが、知事として唯一といってよい成果は以下の協定です。
しかし、その内容(以下)を見るに、県民負担(税金支出)が増えることは明らかで、果たしてそれに見合うどれほどの県民へのメリットがあるのか、はなはだ疑問です。
単にイタリア・イギリス訪問旅行の口実に使われたようにしか見えません。



そして、最後に紹介するのが、お役人の復命書(成果報告書)です。
旅費総額2,328,631円、観戦チケット代629,700円に通訳費12万円を加えると、総額で300万円を超える税金を使った成果としてふさわしいものなのでしょうか。
高校生の修学旅行でもあらかじめテーマを決めて勉強し、どういう点をどう調べるかという準備をしてそれに照応した報告がきちんと出来ます。
大の大人がそろってこの復命書というのは、成果報告としてはもちろん旅行記としても醜悪、中学生レベルの内容で恥ずべきものです。
こういう税金の無駄遣いはもうやめてほしいものです。