県政オンブズマン静岡 〜静岡県庁の光と闇〜

リニアの見返りに新幹線新駅を狙う静岡県知事川勝


平成30年1月3日(水)

自らの発言を自ら否定する状況を演出し、前言撤回。
彼の発言を信用した者を平気で裏切る人となりが垣間見えたPart1に続き、正義を忘却した権力者の常である恫喝が垣間見えるPart2を昨年末に浮上したリニア中央新幹線工事に伴う大井川の流水減少問題と富士山静岡空港新幹線新駅問題に焦点を当てて今回紹介します。

<はじまり>

ことの発端は昨年10月10日の知事定例会見の冒頭で突然飛び出した以下の知事発言です。

 最初はですね、中央新幹線の建設に係る南アルプストンネル工事についてであります。

 リニア中央新幹線整備に伴う大井川の流量減少問題に対しまして、現在、水資源の保全に関する協定について調整が行われておりますが、リニア中央新幹線について、改めて申し上げたいことがございます。

 私は、かねてよりリニア中央新幹線は重要な事業と認識いたしております。もともと、これを推進する委員を務めたこともございました。さて、そうした中で、計画が明らかになった時点で、これは平成23年の春のことでございましたけれども、その年の内に2度も現場に入りまして、発生土置き場などにつきまして、いろんな情報をJR東海などにも差し上げたりして、静岡県として積極的に歓迎する意見を述べるなど、誠意を示してまいりました。

 しかし、不明にして私が分からなかった、気付いていなかったことが明らかになりました。それは県議会をはじめ、各方面から出された水問題であります。水問題を中心に多くの課題についてご指摘を頂き、JR東海に対してトンネル湧水の全量戻しなどを求めてまいったところであります。現時点で、これに対するJR東海からの誠意ある回答はまいっておりません。平成23年、今、平成29年でございますので、丸6年以上経過しているということであります。

 この工事では、何本ものトンネルを掘られます。当然、大井川の流量が減ります。これが一番大きい問題ですね。第二には、残土を南アルプスに処分するということです。第三に地形が改変されます。第四に生態系が壊れます。こうした問題がございます中で、JR東海は、トンネルが掘られることによる水問題につきまして、全量を戻すと明言されていないわけであります。利水団体が求める水の確保について、JR東海が約束をして水を戻すのは当たり前のことであります。

 また、県内には既存の東海道新幹線が走ってるのはご承知のとおりで、これはJR東海道(新幹線)、東京と大阪を結ぶわけでありますが、全走行距離のおおむね3分の1が通っています。本県は、JR東海にとって重要な経営基盤であります。にも関わらず、しっかりとした説明がないまま、ルートが設定され、静岡県にとっては全くメリットがありません。

 この水問題に関しましても、具体的な対応を示すこともなく、静岡県民に対して誠意を示すといった姿勢がないということに対し、心から憤っております。

 現時点では、JR東海への協力は難しいと言わねばなりません。リニア中央新幹線工事に先行して、静岡県民に、例えばこの工事によって、どのような地域振興なり、地域へのメリットがあるのかといったことについて、基本的な考え方もないまま、勝手にトンネルを掘りなさんなということでございます。厳重に抗議を申し上げ、その姿勢に対して猛省を促したいと思っております。


要約すれば、「川勝が認めるような県にとってのメリットを事前に示さなければ県はリニア工事に協力しない、誠意を示せ。」と言っているわけで、まるでやくざの恐喝を彷彿させます。

一方で、知事は具体的に何をメリットとしてJRに求めているのか明示しませんが、この同じ会見の中の質疑でこのようにも言っています。

「一体県のために何をJR東海はなさろうとしてるのか、それも提示ないまま、工事に入らせろと、入ったときには流量は戻すと、ただし全量かどうかは分からないと、これでずーっとですね、この間6年間を経過したということに対し、改めて原点に立ち返って、誰のためのJR東海のリニア新幹線なのかと。370万人の何のメリットもないリニア新幹線など静岡県には要らないんです。そういう態度です。」
つまり、地域貢献とは工事の地元というレベルのものではなく370万人の県民が利益を享受するようなものということになります。

ここで川勝が求めているメリットとして多くの県民が思い浮かぶのは、JRにかたくなに断り続けられている「静岡空港新幹線新駅」のことではないでしょうか。
彼はこの新駅は「防災」のために必要だと言い続けています。静岡空港が南海トラフ巨大地震対策推進基本計画において大規模な広域的防災拠点に位置づけられたからですが、これとて名古屋空港や名古屋港も位置づけられているように県域を越える国家的拠点である基幹的広域防災拠点を逃したための苦肉の強弁です。(詳細は「静岡空港、基幹的広域防災拠点指定逃し、オリンピック空港新駅の野望潰える
これはまともな利用予測といった合理的判断によっては設置が困難であることを承知しているからで、困ったときに「防災のため」と言いまともな議論を封じ込めるのは彼の常套手段です。
実際、JR東海への新幹線新駅設置要請について、「防災、安心安全の国家的見地ということで一貫して説明する。その理屈を持ち出されたらJRもいきなりノーとは言えないはず。常に「防災、国防」一本槍で貫いて欲しい。ぶれないでやってくれ。JR貨物も世の中のため、日本全体の利益のためということについては反論できなかった」などと、難波副知事に指示しているのです。

新駅が行き詰まりを見せる中での今回の唐突な要求は、誰が見ても彼が求めているのがこの新駅にあるのだと疑っても不思議はないでしょう。まして再三県から圧力を掛けられている当事者のJRからすればなおさらです。


<他事考慮を否定するも>

つづく11月30日の知事定例会見では、この見立てが記者から質問されています。

そこで、10月10日の会見での誠意というのは新幹線の空港新駅のことではないのかと問われた知事は、誠意は「協定に関わることについて、誠に乱暴なこれまでの態度」を誠意がないことと言ったのだとし、「そんなこと(空港新駅)に引っ掛けて、水の問題とこれとどちらを取るかというのは、次元の違う話です。」と、事実上全否定したのある。
他事考慮(次元の違う新駅の是非を水の問題において考慮すること)はないということであるが、真に受けて良いであろうか。

そこで、遡ること平成26年8月26日の記者提供資料(以下)をご覧いただきたい。
この最後の部分に違和感のある括弧書きがあることを。
これは、大井川の流量問題と無関係にもかかわらず駅の整備を要求するかのごとき疑問の提起でしょう。




もちろん、この疑問提起が南アルプスの山中地下にリニアの駅を求めるものでないことは明らかで、空港新幹線新駅を求めているであろうことは誰しも容易に想像できましょう。

実際それが真実なのです。

通過県1県につき、1駅造ると言っていたはずだが、うちの県はどうなっているのかと。コメントに書いてください。(リニアの駅を)造る予定が無いのならば、元々、静岡県を通る予定はなかったのではないか。コメントはこれでもいいが、具体性に欠ける。こちらに駅(新幹線新駅)を造ってもらうために、相手に手ごわいと思わせる。(リニアの)駅の話はこちら(新幹線新駅)を狙っている。ちょっと踏み込んで書いてください。
通過県1県につき1駅と言っていたことについて、見解が示されたことが無い。不思議に思っていると。付随的に、見解が示されていないことはおかしいと付け加える。最後に括弧書きでいい。





<水問題利用の狡猾さ>

さて、彼が恐喝材料として着目した水問題ですが、彼の狡猾さを象徴するものです。
というのも、ゴールポストが彼自身によって自在に動かせるようにしているからです。
JR東海はトンネル湧水を導水路とポンプくみ上げで川に戻すとしています。
一方、川勝はトンネル湧水の全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すことトを要求しています。
さらに11月30日の会見では
それはトンネル工事で流量が減るということは当たり前です。これは沢も枯れるでしょう。しかも下流域だけについて流量を戻すとおっしゃっていますけれども、上流域だって沢枯れますよ。
と戻す流域についても言及しています。

つまり、最も厳しいゴールポストとしては「沢単位でも現状と全く同じように水が流れるように」という無理難題が設定できる一方で、JR東海の案に近い手法をもって「実質的に全量」とする容易なゴールポストにも、川勝平太の一存でできるのです。
沼津高架化問題で新貨物駅を「実質待避線」(Part1参照)と言ったように。

そして最後には、広範な県民を納得させる県民メリットとして空港新幹線駅で足りない分はリニア工事で発生する残土を防災(堤防)で活用することの披露で補うことまで考えられているのです。これら全て彼が市町の事業には求める住民合意のないままにです。



このように、彼(川勝平太)は物事を分別して考えることはできない感情の人です。社会に対して公正、公平、誠実とは無縁にして嘘と自己本位の暴力的態度で人を押さえつける人物です。まさに正義なき独裁者というべきで、自己本位の目的のためなら白も黒と言うこともいとわない言行不一致の人物です。その言葉を安易に信用してはいけません。彼、いや彼ら(盲従する役人及び権力者を忖度するマスコミ)の言葉に惑わされ続ければ、待ち受けるのは、ナチス台頭の二の舞、正義のない闇社会の到来です。